カラリアの物流管理システムを自社開発している理由

はじめに

こんにちは、ロジスティクスマネージャーの横山(@katsuya_high)です。

ハイリンクでは「COLORIA (カラリア)」という香り商品のECサービスを運営しています。中でも「カラリア 香りの定期便」は、毎月ユーザが選んだ香り商品をお届けする月額制のECサービスです。従来購入障壁が高かった香水をはじめとする香り商品を手軽に試し、楽しむことができます。

「カラリア 香りの定期便」では1ヶ月で使い切れるサイズの香水をお届けしており、完品をそのままお届けするサービスと比べると特殊な物流作業を必要とします。

弊社では、その物流業務を支えるシステムを自社開発しており、今回は自社開発に至った経緯について記載させていただきます。

カラリアというサービスの全体構成や技術スタックについてはこちらの記事を読んでいただければ幸いです。

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カラリアの特殊な物流機能

一般的な物流業務と関連するシステム

一般的に物流システムというと、発注登録〜入荷〜保管〜発送の一連の荷役作業を管理・補助するWMS(Warehouse Managemant System)や在庫管理システム、配送を管理するTMS(Transport Management System)で構成されたものがよく挙げられます。

一般的な物流業務と関連システム

カラリアの物流業務

「カラリア 香りの定期便」では1ヶ月で使い切れるサイズの香水をお届けする事を一つの強みとしているため、発送する商品のほとんどが香水をアトマイザーに分注したものになります。

このような製品を販売するため、弊社では化粧品の製造販売業許可を取得しています。

また、アトマイザーへの分注作業(以降、製造とします)については、化粧品の製造業許可を取得している企業へ委託しております。

製造の委託図

化粧品の製造販売業である場合、一般的な物流業務に比べ、製品の品質・安全性の担保が強く求められます。

システム要件

システム面においては、以下の点が特に重要となります。

  • 製造業の製造管理機能
  • 製品のトレーサビリティの担保
  • 単品管理・ロット管理への対応

製造管理機能

どの製品をどれぐらい製造するのかどのような表示ラベルを貼り付けるのか等を管理する機能になります。

委託しているとはいえ、製造管理については製造販売業を運営する弊社が行う必要があり、システム面でカバーしたい内容となります。

トレーサビリティの担保

トレーサビリティの担保とは、在庫一品毎にどこから仕入れ、いつ製造され、どのお客様へお届けしたのかを情報として保持しておくことで、調達から消費までを追跡可能な状態にする事です。

万が一製品に不備が生じた場合にも、すぐに影響範囲を認識し、間違いを起こさずに回収を行うために重要な機能になります。

単品管理・ロット管理への対応

上記の製造管理機能・トレーサビリティを実現するため、在庫管理は単品毎に行われ、且つロット管理が行えるシステムでなくてはなりません。

上記を踏まえ、カラリアの物流機能において必要となる物流システムの要件は以下になります。

  • 単品管理・ロット管理に対応できる在庫管理システム
  • トレーサビリティを担保できるWMS
  • 製造管理に関する機能

また、カラリアの物流では配送業務は運送会社に委託しているため、配送に関する管理機能は必要ありません。

カラリアの物流業務と関連システムに必要な要件

なぜ物流システムを自社で開発しているのか?

さて、長い前置きとなってしまいましたが、ようやく本題です。

まず、これまでの文章からカラリアの物流は特殊な要件がいくつかあり、パッケージ化された外部サービスでは要件を満たすものはありません。

この特殊な要件というものが、まず一つ目の理由となります。

それ以外にも、自社開発を選択した理由として、大きく以下の2点が挙げられます。

  • サービスの成長に合わせて柔軟にカスタマイズできる
  • 物流体制の改善をデータを元に行える

サービスの成長に合わせて柔軟にカスタマイズできる

会社の成長スピードを下支えするため、物流体制への要求の変化に対してスピーディに対応することが重要です。

まず、物量の変化に関して、

カラリアは大変有り難いことに年々利用者数が増えております。直近1年では約2倍に増えており、それに伴い、毎日の出荷件数も増え、物流現場の規模拡大を何度も繰り返してきました。

現在はまだ単一拠点で対応できていますが、将来的には物流現場の複数拠点化等の必要性が出てくる可能性があります。そうなった際にも柔軟にカスタマイズを行うことが出来ます。

次に、物流戦略の変化に関して、

現在は、物量が伸び続けている中、注文を受けてから発送するまでの期間(発送LT)をいかに縮めるかという点にフォーカスした戦略・施策を行っておりますが、このフォーカスポイントはコスト面であったり、在庫回転率であったり時々刻々と変容していきます。

それに伴い物流作業も必要に応じて変容していくため、システムの改修も随時必要となってきます。

このような状況で他社物流サービスを利用していると、その変更が適応できるまでに時間がかかってしまいますし、自社開発と比較して変更コストもかさみます。

こういった物量の変化や戦略の変化に応じて、柔軟に物流管理システムを改修・適応できることが、自社開発を選択している理由の一つになります。

データを元に現場作業効率改善を行える

お客様に素早くお届けして早く香りを楽しんでもらうため、また発送にかかる人件費を抑えるためにも現場作業の効率改善はとても重要なものになります。

これまで現場の感覚で課題が特定され、なんとなく改善されてきた作業効率ですが、物流システムの作業履歴データをうまく活用すれば、根拠付けられた課題特定と効果見積もりが可能となります。

ここまではパッケージ化された物流システムでも対応できる部分だと思いますが、取得・蓄積したいデータが新たに出てきたら、必要に応じて柔軟にシステムを改修し、欲しいデータを蓄積する体制を整えることが自社開発だと可能になります。

実際の活用例はまだありませんが、作業毎・作業員毎の熟練度を可視化し、新人作業員さんでも初日から熟練作業員さんと同じ作業効率で働くためにはどのようにすればよいかを明らかにできないかなと睨んでいます。

おわりに

物流管理システムについて自社で開発している経緯をご紹介しました。

他にもいくつか理由はありますが、決め手となる理由は上記のものとなります。

直近では、以下の記事で触れられているモジュラーモノリス化が完了しておりまして、その内容についてはまた後日、別記事にて紹介させていただこうと考えております。

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